「カラミティナイト」の続巻。
遠野忍の〈災厄の心臓〉を守る〈災厄の騎士〉となった智美は、その結果親友の祐子を救うためとはいえ、友人の咲希を殺してしまったことで深く傷つく。そして、優子との間にも深い溝を作ってしまう。一方、〈災厄の心臓〉を狙うカルト集団〈慟哭の三十人衆〉は、智美たちの担任雪村と手を組み忍たちの情報を手に入れる。巻き添えにしてはいけないと最愛の女性美由紀と別れた。その直後、彼を〈慟哭の三十人衆〉の刺客が襲う。優子の助けを求める電話を受けた智美は、〈第五の騎士〉となり刺客のもとへ向かう。
本巻は、戦いという生死を分ける状況に置かれた傷つきやすい少女たちの葛藤を中心として展開する。葛藤しながらも現実に敵は襲いかかってくるし、その現実の前に彼女たちも青い感傷を捨てざるをえない。作者の筆致はくどいばかりにその心情を繰り返し繰り返し描きたてる。現代の青少年に共通するもろさを克服するにはここまでの葛藤が必要なのだと示しているのであろう。
戦いの繰り返しに神経が鈍磨し戦闘マシーンとなっていくという形をとらなかったのは作者の見識だろう。それではこの物語のテーマを描いたことにはならないのだ。「平凡な少女」ではなく「ひきこもり」を経験した少女を主人公にしている理由が、本巻ではっきり示されたといっていい。
そうなると、興味は〈災厄の心臓〉の正体に移っていく。本書ではその秘密にはほとんど触れられていない。わずかにヒントがちらりと示されているだけである。これでいいのだ。主人公たちが戦う準備を完了し、結末を迎えた時に明かされるくらいでいいのだ。
新たに加わった美由紀というキャラクターが今後どのような意味を物語にもたらしていくのかも含めて、次巻以降も楽しみである。
(2001年9月16日読了)