「スター・ハンドラー 上」に続く完結編。
ミリたちが到着した危険度Aの惑星で捕獲して調教したヤアプ、ポチは群れの個体が素数でないとたちまち凶暴になり素数になるように群れの仲間を殺してしまう性質を持っていた。この性質を利用して素数を利用した暗号解析の道具に使おうというのがペテロの目的であった。ミリたちの頭上にはさらに危険な遊翼動物オオドラゴンモドキが飛び交っている。ペテロはミリたちの手からポチを奪い取ってしまう。ポチを取り戻そうとするミリはなんとミネア宙軍の協力を得てペテロのひそむ惑星ミスルタに潜入することになる。ところが集合したミネア宙軍の組合員たちはいずれも芸人の兼業というとんでもない連中。ポチを救い出すために前代未聞の作戦が実行されて……。
上巻を読み終えた時点では主人公の成長物語かと思われたが、下巻では異星生物ヤアプの独特の生態や芸人艦隊の珍妙な作戦、そして最後まで手に汗握るポチの奪回劇とサービス精神満点のエンターテインメントSFになった。
キャラクターもよいが、やはりアイデアが面白い。必ず素数で群れを作るヤアプの秘密などは秀逸なアイデアであるし、それ以外にも細かなアイデアが次々と盛り込まれている。ストーリー展開とアイデアがうまく噛み合い相乗効果を上げている。
実はジュヴナイル作品によくある主人公の成長に力点は置かれているがそのためにストーリーの背景や中心となるアイデアが中途半端に終わるものにならないか少し心配していたのだがそこは手練れの作者、きれいにまとめている。とにかく小手先だけでない品格のあるユーモアが全編に横溢した佳品である。
(2001年9月28日読了)