「皇国の守護者 6 逆賊死すべし」に続くシリーズ第7巻。
救国の英雄となった新城は新たに近衛嚮導聯隊を編成することを命じられる。しかし、まだその編成作業がまとまらないうちに、守原家はクーデターを起こし駒城家を一気に滅ぼしてしまおうと計画している。水面下で動くクーデター勢力とそれを察知しながらも当主の駒城保胤から政治的に解決すると申し渡され実力行使に出ることのできない新城の表面に出ない暗闘が続く。クーデター決行の予定である凱旋式典を目前に控え、それぞれの思惑は帝国の動きも巻き込み複雑な様相を示し始めた。
本書に至り、異世界ファンタジー的な要素は完全に舞台背景のみにとどめられ、戦略シミュレーションとしての性格が色濃くなってきた。ここで描かれるのは「愛国心」の本質であろう。「愛国心」を看板に利己的な動きをする者と、自分が生き残るために戦うことが「愛国心」に連動していく者の矛盾した動きが細部までじっくりと書き込まれていく。ここらあたりの展開は作者ならではの細やかさである。
反面、書き込めば書き込むほどストーリー展開は遅くなり、また作品世界の全体操が見えにくくるという作者の特徴も顕著になってきた。その書き込みを好むファンも多いのだろうが、できればもう少しテンポアップしてほしいところだ。そうでないとこれまでの作者のシリーズものと同様細部と全体像の間に微妙な矛盾が生じかねないし、ストーリー自体が泥沼にはまってしまったように動かなくなる可能性もある。
次巻のクーデター実行でどこまでストーリー展開がスピードアップするかが鍵になるのではないだろうか。
(2001年10月4日読了)