「Kishin−姫神−I」の続刊。
出雲の支配者となった己貴(ナムジ)はその魔力に満ちた視線で、忍穂の弟穂日や、忍穂を慕う木花佐久夜姫を自分の虜にし、支配する。穂日はその険で忍穂を傷つけ、木花佐久夜姫は台与を狙う。台与の体から木花佐久夜姫に移った日巫女は出雲へ渡り、己貴に接触しようとする。一方、出雲では先王の皇子、大歳が先鋒となり大倭に戦闘を仕掛けてくる。傷ついた忍穂は戦場に出られず、台与は仙道を極めようとする思兼を軍師として戦いに臨む。そして、ついに対峙した忍穂と己貴の戦いの結果は……。
記紀神話と邪馬台国伝説をベースにした古代史ファンタジーの、第1部が完結。邪馬台国が東遷して大和王朝を築いたという説をもとに古代出雲王朝との戦いを描く。本巻ではまだ己貴(大国主)の出自などが謎なままに終わっているが、実は作者のオリジナリティを発揮できるのはその部分だと思うので、このまま続巻が出ないようだとその面白さが伝わらないままに終わってしまうことになる。
古代史のキモというべき記紀の記述をうまく生かしているだけに、きちっと本当に完結した形のものを読みたいものだ。例えば日巫女がこのあとの大和王朝にどのように関与していくのか、なども気になるところ。今後の展開に期待させる第1部ということができるだろう。本書はだから、まだその通過点でしかないのだ。
(2001年10月9日読了)