読書感想文


真田幸村真田十勇士
柴錬立川文庫(二)
柴田錬三郎著
文春文庫
1975年4月25日第1刷
2000年5月5日第34刷
定価448円

 「猿飛佐助 真田十勇士」の続刊。
 本巻でも異形の人物たちがそれゆえに抱く影とともに描かれ、さらに豊臣家とともに滅びる真田幸村と十勇士たちを活写していく。幸村がなぜ豊臣家とともに滅びなければならなかったのか。作者はその理由を明確に記してはいない。しかし、本書で描かれた幸村の行動から推測される理由の中に、豊臣家への義侠心などいうセンチメンタルなものは入りこみようがない。自分の持てる力を注ぎこみながらも様々な妨害により果たされなかった男が悪あがきせずにすっぱりと自分の生をあきらめる、そういう滅びの美学が感じとれる。
 作者はこの時代が実は国際性豊かな時代であったことに着目している。幸村が秀頼に「日本を捨ててシャムに行きましょう」とすすめる場面があるが、まさにそういう時代に大坂城にこだわり続けて結局滅びてしまった豊家に対する哀れみのようなものすら感じられる。
 自由闊達で、しかし哀愁をたたえた本書の魅力に欠けるものがあるとすれば、それは真田十勇士全員を描き切ることができなかったところかもしれない。ヒーロー群像が10人というのはさすがに多い。が、もう少し分量があれば描き切れたかもしれない。
 もっとも、そんなに分量はいらない、少し欠けたくらいがちょうどいいのさと作者は言うかもしれないな。そんな気がしてならない。

(2001年10月14日読了)


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