「鬼童来訪 起の章」に続くシリーズ第2巻。
真那たち3人がたどり着いた町は、囮を使って鬼を誘き寄せ爆薬で破壊するという方法で鬼と戦っていた。町を束ねる指導者は翔月という若者で、常に綾という女性を自分の囮として鎖でつなぎ止めている。真那は〈鬼童〉というだけで町の人々から忌み嫌われる。かつてこの町を訪れた〈鬼童〉が好き放題をした記憶を忘れていないのだ。魔那は綾から重大な秘密を教えられる。彼に鬼退治を命じた百帝こそ鬼であり、翔月は爆薬の力を用いて百帝を討ち滅ぼそうとしているというのだ。自分の行動に疑問を持つ真那。一夜にして大人へと成人しかつて真那が愛した女性と同じ姿で彼の前に現れたかえで。翔月に誘われて百帝を滅ぼす計画に加わる泰冥。しかし、計画を実行する前に鬼の集団が現れ、町は大混乱に陥る。傷ついた真那の前に現れた病姫とは……。泰冥の正体は……。そして鬼を生む障母が真那に与えたものは……。
人は自分とは何かということを求めさまよい生きていく。本書に登場する人物は全てが自分を探しているといえる。そして、それまで強く自分を律していた人間でさえ、自分を支えるものがなくなった時にもろくも崩れてしまう弱さを抱えている。それらが鬼という存在をキーワードとして骨太なストーリーのもとで描かれていく。
本書では作者流の創世紀が語られる。そこで描かれる地上の生き物の貪欲さを見よ。この地上に生けとし生きるものの生存本能というものが寓話的に余すところなく伝えられているではないか。そこに、本シリーズの単なる鬼退治の話にはならない魅力を感じた。
自分を見失いつつある登場人物たちがこの先どのようにして新たなアイデンティティーを見つけてゆくのか。次巻の展開がますます楽しみになってきた。
(2001年10月15日読了)