「おもいでエマノン」に続くシリーズ第2短編集。
本書は前巻とは違い、環境破壊などの生物の危機を訴える現象にエマノンが立ち会うという物語が中心となっている。それは地上最後の象が衛星の破片の地表落下を人類に訴えたり(「さすらいビヒモス」)、強力な枯葉剤に汚染された土地に順応した生物を遺伝子操作で作ろうとする男であったり(「まじろぎクリーチャー」)、意志を持ち生物をしゃぶり尽くす赤潮の復讐であったり(「あやかしホルネリア」)、人間に開発されるアマゾンの奥地で崩れかけた風水をもとに戻そうとする呪術師であったり(「まほろばジュルパリ」)、強い力を秘めた女性が人間に嫌気がさしてもう少しで滅ぼしてしまうところをエマノンが阻止をした(「いくたびザナハラード」)といったぐあいである。そういう点では全体を通したテーマがはっきりとしているといえるだろう。
ここでのエマノンは傍観者というわけではないが、それぞれの主人公にアドバイスをするという立場にある。エマノンの持つ過去の記憶が役にたつ場合もあるし、無力である場合もある。謎の少女というだけではちょっともたない部分が出てくるのはしかたないかもしれない。
これらの物語が「エマノン」の物語である必然性があるかというと、必ずしもそうではないと思った。エマノンのように特に強烈な個性が際立っているわけではない主人公をメインにした短編連作の難しさかもしれない。このあとシリーズが10年近く中断してしまったのもそのあたりに理由があるのではないだろうか。第1作のようなリリカルな味わいは、本書ではかなり薄くなり、シビアな物語が多くなっている理由もそこにあるのだろう。
(2001年11月2日読了)