「双星記 4 凍てつく月の戦い」の続巻。シリーズ完結編である。
惑星アル・ヴェルガスからの脱出を図るランディスバーゲン一行は、みごとにシャトルをのっとり、拿捕されていた宇宙戦艦フライング・サードニクスを乗員ともども取り返し、ベルゼイオンへ帰還していく。しかしアル・ヴェルガスのリュウガサキはフライング・サードニクスにしかけをほどこし、遠隔操作で爆発するようにしていた。それを見破ったランディスヴァーゲンは、乗員を脱出させて自分だけでこの危機を回避しようとする。人の命をなんとも思わないリュウガサキのやりくちに対し不満をいだいている傀儡であるラインバック司令官の下した決断とは。そして戦いの帰趨はどちらに。
数多くの人物がいりみだれるこの作品がまさか5巻で完結するとは思ってもみなかった。実際、戦いの結果は一応出るのであるが、それ以降の歴史の推移は読者の想像に任せるというかたちをとっている。
宇宙史を描き出すとき、どこで物語を切るかが難しいところである。本書ではひとつの戦争を切り取って描いたものという構成になっているため、その戦争が終わると完結というのはまあ正しいやり方だろう。しかし、そうなると数多く登場させた人物たちの人間模様も断ち切られてしまう。このシリーズの場合は主人公のランディスヴァーゲンがこの戦争の後始末をどうしたかということにまでふれておかないと、その人間模様は収拾のつかないまま放り出されたような印象が残ってしまう。せっかくの設定がそれでは惜しい。
物語そのものはしっかりとした構成で奥行きのあるものになっているのだから、その奥行きをさらに生かした方向で続編が書かれることを望むのである。
(2001年11月25日読了)