「KLAN I」の続巻。
虎ノ介らが変身して起こしたホテル・ファーイースタンでの騒ぎは、動物商の自殺とその手によって焼死させられた動物の死骸によって世間では決着がついたものと思われていた。しかし、焼き殺された虎の死骸に疑問を抱いた動物学者の立花美笛は、その疑問ゆえに命を狙われることになる。事件の隠蔽をおこなったのはリンフォード伯爵の配下のしわざで、隠蔽工作のことが明るみに出る前に口封じをしようとしたのである。美笛の恩師である國弘教授は、彼女からその疑問を聞いていたために交通事故をよそおって殺されてしまった。美笛を救ったのは虎ノ介、風子、アリョーシャ、ルネたちであった。刺客として現れたのはもとルーマニアの工作員、イリーネ。美笛という新たな道連れができた彼らは、虎ノ介の叔父を頼って新潟へ。美しき刺客との対決の行方は……。
前巻を引き継いだ新たな著者により、主人公たちの新たな逃亡の様子が描かれる。予想していたのは複数の書き手によって続きが書きつがれ、競作のようになることだったのだが、どうやら本巻の著者が続けて書いていくようである。そして最終巻にはふたたび原案者が完結させるという形をとるらしい。
となると、心配されるのはストーリーのふくらませ方に制限ができるのではないかということだ。本巻は新たな刺客との対決という形をとっているけれども、今後も次々と刺客が現れてそのたびに主人公たちが戦うという形をとりつづけるのではないか。それはそれでアニメの原作としてはおもしろかろうが、小説のシリーズとしてはどうだろうか。物語が単調になりはしないだろうか。それともその制限を逆手にとって驚くような展開を著者が見せてくれるだろうか。
そういう意味では若い書き手である著者の力量が試されているということになるし、またこれまで私が読んできた著者の作品から考えると、その試練に耐え得る力量は備えているものと期待できる。本巻はうまくつないだという印象がある。続きでどのような展開を見せるか、このシリーズをきっちりと評価していくのはそれからだろう。
(2001年12月4日読了)