「BLOODLINK 獣と神と人」に続くシリーズ第2巻。
真山和志は自分の手で級友を殺してしまい、その級友が完全に変化していなかったことからくる罪悪感にさいなまれていた。入院する彼を見舞うカンナに対しても、その向こうに死んだ級友の影を見てしまう和志。そんな中で、〈地蟲〉を人類進化のバネとなる存在であると見なす学者たちから事情を聴取され、カンナが〈地蟲〉にとりつかれた人間を駆除するプロジェクトのトップではないかという疑いをもった彼は、退院後もよりいっそうカンナと距離をおくようになる。しかし、カンナは〈地蟲〉に襲われ、急死に一生を得ながらも心を閉ざした状態におちいってしまう。和志はカンナを救うためにある決断をするのだが……。
1冊のほとんどすべてが主人公の内面での葛藤に費やされている。確かに人を殺してしまった衝撃などが人の心に与える傷は大きいだろうし、そこから立ち直るのには相当の苦悩を経なければならないというのもわかる。そして、作者はそういった苦悩を細大漏らさず描き切ろうとしている。
シリーズのテーマとしてその葛藤をストーリーの軸にすえることは間違いではないが、ここまでくると読んでいてきつい。これでもかこれでもかと苦しみをたたきつけられると、読み手が息苦しくなってしまう。息抜きできる箇所がないのである。メリハリがきいた物語は、どんなに長くても読者をあきさせない。「痛み」を読者に味わってほしいという作者の意図はわかるが、「痛み」ばかりを追い求めて潤いがないのが本書の苦しいところかもしれない。
(2001年12月4日読了)