「鬼童来訪 導の章」に続くシリーズ第3巻。完結編である。
百帝こと泰冥の出自があきらかにされ、彼が代々生まれ変わって3000年ものときを生きてきた秘密があかされる。彼は新たに生まれ変わって今度こそ鬼を滅ぼそうとするが、生まれ変わりの鍵となる蕩かしの実から生まれた女は鬼童の真那が抱いていた。真那を憎み、殺そうとする泰冥。彼らが戦いを続ける間にも、鬼たちは人々を食らい続けていく。果てしない戦いを見つめているのは、真那が愛した女性、守音の魂を宿した少女、あけび。戦いの結果、生き残ったのは誰か。そして、鬼を使ってすべてのものを滅ぼそうとする神の意図とは……。
本書は、説話の形をとった創世記である。神という存在の残酷さ、生きるという行為そのものの秘めるエネルギーなどを、みごとに描ききっている。これまでの2冊にはられていた伏線が本書ではしっかりと解明される。その構成もうまい。なによりも、本書には作者が書きたかったテーマを読み手に伝えるだけの力がこもっている。
疑似日本を舞台にとった異世界ファンタジーはこれまでに何冊か読んできたが、どうも世界背景が薄っぺらくなるという印象が残り、やはり伝奇小説は歴史や伝説、神話を踏まえたものでないとと思ってきた。しかし、本書はそのハードルをみごとに越えてみせた。それは、その世界が借り物ではなく作者自身のものになっているからなのだろう。そういう意味では伝奇小説としての異世界ファンタジーに大きな可能性を示したシリーズということができると思う。
自信をもってお薦めしたい。本書はまちがいなく面白い。
(2001年12月18日読了)