「紫の砂漠」の続編。
詩人となる決意をしたシェプシが一の書記に求められて「最初の書記」の日記を解読した結果、それまで禁忌の土地であった砂漠は解放され、武器となる光線砲さえ作られるようになる。地表に隕石が降り注ぎ、壊滅状態になる村が出、耳を閉ざした〈聞く神〉のかわりを書記たちがするようになっていく。巫祝の一族は力を肥大させる書記たちに対し、生まれた子どもを差し出すことを拒否する。そして、子どもを強権的に差し出させようとする書記たちに対し、超能力を使える巫祝たちはその力を用いて反撃を始める。彼らの住む世界を二分する争いがはじまった。今は亡き詩人のクローンであるアージュを育てるシェプシはこれに対しあまりにも無力であった。この争いに心ならずも加わったシェプシは、巫祝に捕らえられる。シェプシが出会った一の巫祝マアートはアージュにそっくりだった。マアートもまた詩人のクローンだったのだ。和睦の席でシェプシが果たさねばならない役割とは……。
ここで作者は戦争というものの本質を描き出そうとしている。一定の秩序のもとにバランスをとっていた、その一角が崩れた時の人の心のもろさをファンタジーという方法で表現しているのだ。
舞台となる世界のイメージが美しければ美しいほど、人の心の醜さが浮き彫りにされてくる。主人公がピュアな存在として書かれているだけに、その醜さは強調される。そこらあたりのうまさ。ファンタジーは苦手な私だが、小説としての表現の巧みさに引きこまれるものを感じたのである。
(2002年1月20日読了)