読書感想文


宙都 第二之書 海から来たりしもの
柴田よしき著
トクマノベルズ
2002年1月31日第1刷
定価800円

 「宙都 第一之書」に続くシリーズ第5弾。
 木梨香流をふりとばした怪物は、巨大な芋虫であった。彼女を探しにきて合流した天狗の三善やゲッコー族の珠星、蒼星はその芋虫が繭に包まれ、やがて羽化するのを見守ることになる。一方、ハワイでは危機管理委員会の一員である医師、加藤にとらえられた阿川真知が、彼の口から〈美しき民〉が人類にとって危険な存在であり、闇の神々やゲッコー族というのは〈美しき民〉による作り話だと聞かされる。その〈美しき民〉である藤島美枝は、伝説を語り伝える老婆を訪ねていた。日本の上空に浮かぶテニアン島では、十文字雄斗が琵琶湖から連れて帰ってきた全裸で見つかった記憶喪失の女性、アカネや、真行寺君之の前妻であるジュディらがあらわれ、結界の内側になんとかして入ろうとしている。ビシマの力が弱まる中で、〈闇の神々〉による静かな反撃がはじまろうとしていた。
 本書では主要な登場人物はほとんど動けないでいる。新たに登場した巨大な芋虫、あるいは謎の女性たちの出現にふりまわされている。物語は動いてはいるのだが、それは次巻以降に起きるであろう激変の、いわば初期微動のような感じではある。その動きは登場人物たちの心に微妙なさざなみを起こしているため、信頼や愛情で結ばれた彼らの気持ちがゆらぎはじめるという形をとっている。
 派手な動きはないけれど、この波紋がこれ以後どのように広がっていくかを期待させずにはいられない巻である。それでももう少し大きく動いてくれないかとは思う。気長に待つしかないか。

(2002年2月6日読了)


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