「龍の黙示録」に続くシリーズ第2弾。
青森の寒村、石塔に伝わる「御還り祭」。100年に一度というこの大祭を前に、村に住む若い女性たち数名が行方不明になった。その中の一人、久野美佐子の親友である石塔小矢は、「御還り祭」の主神である「御還り様」の正体に不審を抱き、作家の龍緋比古に助けを求めてくる。秘書の柚ノ木透子やメイドのライラには行き先も告げずに。キリストの血を分け与えられた吸血鬼である緋比古は、「御還り様」の正体がキリストの再臨ではないかと半ば期待していたのであった。わずかな手がかりから青森へと緋比古を探す透子とライラ。透子はその途中でオットーと名乗る不思議な少年に出会い、荒覇吐神の剣を手にする。一方、小矢と会った緋比古は、「御還り様」の正体を探るために小矢の祖父の書き残した研究書を読む。そこに書かれていた意外な真実とは。「御還り様」の真の姿とは。そして緋比古と「御還り様」の対決の行方は……。
東北に伝えられるキリスト来日説を軸に、蝦夷地の土地神であるアラハバキの伝承などを織りまぜながら、迫力のある戦いが展開される。本書は前作よりもはげしいアクションもあり、かなり趣きは違ってきてる。物語がテンポよく展開し、ピンチにつぐピンチが主人公たちを襲い、最後まで読み手をひきつけていく。
ここで描かれるのは妖異に魅入られそこから逃れられないものたちの哀しみであり、自分を強く持って魅入られないようにしようとする少女の孤独な戦いである。緋比古や透子の派手なアクションの陰になっているが、女性たちの嫉妬が物語を動かしていく様子は、悲しくも、辛い。単純な戦いではないのである。
本書で透子は緋比古にとって特別な存在であることがほのめかされる。それは即ち今後もこのシリーズが続くという意味であろう。本書は前作以上に内容が濃く、読みごたえがある。この調子でシリーズが続くことを期待したい。
(2002年2月19日読了)