「紅の鳥
銀の麒麟 上」の続巻。
雨の中、準銀王を探しにでた里灯は、火の質を持つために水にあたると力を失ってしまう。遊び人の栄徳に助けられた彼女だったが、言い寄られるのに対して強い嫌悪感を抱き、つい神族としての力を解放してしまう。嫌な相手に触られることの嫌悪感と、準銀王に触られた時の心休まる思いの違いが持つ意味を考えた里灯は、自分が準銀王に好意以上の感情を抱いていることを自覚する。一方、里灯が行方不明になったことや遊び人のもとにいたと知った時の思いから、準銀王は自分が彼女を愛していると認識する。そして、生涯の伴侶になってほしいと告白した。告白に対して戸惑う里灯。彼女には、冠を見つけだすという使命がまだ残っているのだ。玄英という道士が冠を持っているということをつきとめた里灯たちは、玄英のもとに急ぐが、冠は湖の底に封じられてしまったあとであった。里灯はぶじ冠を取り戻すことができるのか。そして、里灯と準銀王の愛の行方は……。
本書では、里灯という主人公のキャラクターのもつ幼さがいい形で物語にメリハリをあたえている。愛の告白に対しても、彼女はまず戸惑う。告白されたことの意味を頭ではわかったつもりでいても、心の底から理解していないからなのだ。そして、試練をくぐり抜けて成長したことで、はじめてその告白に答えられるようになる。成長というものを、恋愛という手段を用いてうまく表現していると感じた。
ただ、この内容であれば、もう少し刈り込んで短めにした方がよいだろう。冗長とまではいかないが、二人の人物の心の動揺をこまごまと書くことで、かえってストーリー展開のリズムが悪くなってしまっているように感じるのだ。
一冊ごとに実力をつけてきている作者だけに、思い切った刈り込みができるようになれば、さらに面白い物語を生み出せるようになるだろうと期待している。
(2002年2月21日読了)