「カーマイン・レッド セトの神民〈前編〉」に続く完結編。
惑星〈アム・ドゥアト〉に到着したジャスパー、チェンたちゲームの参加者と赤毛のエイジュは、ゲームの参加者たちが刺客によって次々と殺されていっているという事実を知る。最後の一人となる前に刺客を倒したジャスパーは、チェンたちとともに〈アム・ドゥアト〉の神殿にたどりつく。彼らが所持していた石は、〈アム・ドゥアト〉の次の支配者を決める印であった。唯一生き残っていたものが持っていた石の色で次の支配者が決まるというのだ。新しい支配者は二人……前の支配者ティスハの次男カーズとその妹アシュリア。エイジュは地下牢にいれられ、そこで謎の老人から〈アム・デュアト〉の秘密について知らされる。また、ジャスパーはアシュリアの奸計によりカーズ殺害の犯人にされかける。しかし、ジャスパーにはある使命が課せられていた。アシュリアが目覚めさせようとしている神、セトの正体とは。そしてセトが目覚めた時に起こる災厄とは……。
サバイバル・ゲーム的な展開であった前巻とはうってかわって、本巻はSFアクションである。特に、コアとなる惑星〈アム・ドゥアト〉とセトのアイデアはちょっとばかり設定に無理はあるが、なかなかユニークなもの。
テーマとしては先進文明に対する人間の姿勢というあたりだろう。作者は精神的に未成熟な人物に権力を与えるということにより、どんなに優れた技術も子どものおもちゃになった時はそれが恐ろしい破壊兵器になってしまうという展開でそのテーマをより鮮明にしている。
主人公たちはまだまだ動きだしたばかり。今後もこの主人公たちによって新たな冒険がくりひろげられることが予想されるし、またそのような終り方をしている。伝奇アクションやファンタジーで活躍中の作者がさらに本格的なSFに挑戦してくれるのを私は心待ちにしている。
(2002年3月9日読了)