「英国妖異譚」に続くシリーズ第2巻。
手にいれた者は必ず死ぬという肖像画。それは揺かごを覗きこむ母親を描いたものだった。ユウリの通うパブリックスクールの寮に、その絵が持ちこまれ、赤ん坊の泣き声とともに、生徒自治会総長候補のハワードが転倒し大怪我をおう。秘密を解く鍵はその絵の由来にある。ユウリは〈魔術師〉の異名をとるコリン・アシュレイから借りた本を手がかりに、その謎を解こうとする。ユウリがボランティアで手伝う孤児院の少女リズや、親友のシモン、そしてコリンたちも別の角度から謎に迫っていく。絵に隠された秘密とは。そしてユウリを助ける不思議な転校生の正体は……。
英国を舞台にしたオカルト・ホラーである。絵に隠された歴史的な背景などの史実や英国に伝わる妖精譚などを巧みにおりこみ、非常によくまとまった作品に仕上がっている。主人公は霊感があるといってもそうスーパーマン的な活躍ができるわけではない。そんなひよわな少年が自力で謎を解こうとする心理などもていねいに描かれている。
実は、私は大事なところでちょっとひっかかりを感じてしまった。謎の絵が寮に運びこまれた理由がわからないのである。主人公が謎の絵に秘められた呪いを解くというためには絵は寮になければならないのだが、そこにそれらしい理由がきっちり書きこまれていれば私もひっかかりはしない。しかし、そこがあいまいになっているために緻密に組み立てられた物語の前提があやふやになってしまっているのだ。もったいない話である。
そういったひっかかりはあるものの、ストーリー展開など、前作よりもしっかりと組み上げられているし、登場人物たちの人間関係にも奥行きが出てきた。作者が少しずつ成長していることを実感した1冊。
(2002年3月16日読了)