「陰陽ノ京」の続巻。
文章生、慶滋保胤が外法師の氏家千早の呪法に対して、陰陽師とはまた違ったアプローチをする。千早とは安倍晴明のかつての同僚で、貴族の横暴により庶民が犠牲になっていることに怒りを感じて自ら外法師の道を選んだ男であった。晴明は千早が人を殺せないように封印をしたのだが、自らの手を汚さずに相手の魄を自然に切り離すという呪法を会得していた。10年ぶりに会った千早に対して決着をつけようとする晴明。しかし、千早は晴明の息子、安倍吉平の魄を人形に閉じこめ、人質としている。千早は横暴な貴族の命だけはなんとしても奪うつもりでいたのである。息子の命までも犠牲にして陰陽寮の役割を全うしようとする晴明の前に現れたのは、宿命のライバルである芦屋道満であった。道満が千早に教えた秘術の秘密とは。そして戦うことなくして千早のもとから魄を取り戻そうという保胤のとった方法とは……。
陰陽道ものとしては異色作であった前作であるが、本書もまた呪術合戦に陥ることなく独自の方法で陰陽道や陰陽寮の本質を描き出している。保胤を主人公にしている意味が、本書でははっきりと打ち出されているのである。
作者の主張は保胤の言動にはっきりと打ち出されているが、できればあまりストレートにそれを吐露させることなく、千早との直接対決を描いたクライマックスの場面だけでその主張を読み手に示すという方法をとった方がよかったとは思う。対決の前に保胤があまりにも能弁になりすぎて、クライマックスたるべき対決の場面に盛り上がりを欠くように感じられたからだ。
そういう意味ではまだ書き込みのバランスに課題は残っていると思うが、それでもこれまでの陰陽師ものとは違うものを描き出そうという作者の意欲は十分に感じることができる。本書以降もシリーズは続くようだが、この調子で独自の道を切り開いていってほしいものだ。
(2002年3月22日読了)