「陰陽寮外伝之一 晴明百物語」に続くシリーズ第7作。
陰陽師、滋岳魚名による大元帥法の呪により、藤原道長の息子田鶴は瀕死の状態に陥っていた。心労のあまり道長もまた病に倒れる。復活した安倍晴明は、魚名のもとに行き、呪を解こうとする。一方、京の都には髑髏様を崇める怪しい宗教が起こっていた。髑髏様とは怪人徐福であり、彼は麻薬で判断力の鈍った者どもを手駒にし、始皇帝復活の法を行う基盤を作ろうとしていた。また、大江山では、盗賊鬼道丸の砦で蘆屋道鬼の息子である麗門が誕生し、その超能力で盗賊たちを支配する。麗門は母の孔雀とともに上洛する。侵略者刀伊はいよいよ近江に入り、京を指呼におさめている。風雲急を告げる京都を待つ運命とは……。
久々の本伝は、富樫ワールド全開といった様相を見せてきた。実在の人物も架空の人物も、史実なぞそこのけの動きを見せる。だからといって歴史を改変するというつもりはないようだ。つまりは史実を背景にしていながらも、起こっているできごとは破天荒ということになる。どのように史実と辻褄をあわせるのか。いや、作者自身にもちんまりとまとめることはもう不可能だろう。
作者の魅力は実はそういった破天荒さにある。力業で読者をねじ伏せるという感じなのだ。超能力や麻薬教団など、いわば使い古されたアイデアを前面に出し、平然と物語を展開していく。善悪ははっきりとし、わかりやすい図式を徹底的に提供する。
本来なら、私はそういう手法には批判的なのだけれど、ここまで臆面もなくやられると諸手を挙げて降参せざるをえない。どこまでやってくれるのか、そこが楽しみになってくる。全くもって不思議な作風である。
次巻以降も、どこまでこの力で押し切っていくのか、楽しみである。
(2002年3月24日読了)