「都市の文明イスラーム」に続くイスラーム史シリーズの2冊目。
本書はオスマン帝国、サファヴィー朝、ムガル帝国の3大王朝の興亡を中心に15〜18世紀のイスラーム世界についてまとめたものである。イスラーム大帝国の誕生にモンゴルが大きく関わっていたことや、イスラーム世界の分裂の経緯、そして世界史においてどれだけイスラーム文明が重要な役割を果たしているかなど、教科書では実に簡単にすまされてしまっていることがわかりやすく説明されている。
特に各王朝の興亡などそれぞれがドラマティックである。一般に人気のある中国史に負けない多彩さである。でありながらもイスラーム世界にひとつの統一感を与えているのはやはり宗教が生活や社会すべてを律しているからであろう。これはキリスト教が教会と法皇の権威でヨーロッパ世界をしばっていたのとは質が違う。キリスト教会の権威が無知な農奴に上からおおいかぶせるように社会を律していたのに対し、イスラームの場合は教育制度などが充実していて社会全体に活気が感じられるのだ。
本書は政治史を中心にしたもので、例えば科学技術や学問がどのように優れていたかを詳述していない。そこらあたりにももう少しふれてほしいところである。そうすれば、イスラーム帝国の先進性がさらに読者によく伝わったのではないだろうか。
(2002年4月14日読了)