「木の国の媛」に続くシリーズ第2巻。本巻から書下ろしとなる。
根の国の王子、弓鳴日子と結ばれたヨキナは、八万の国からやってきた侵略者と戦う決心をする。しかし、戦いに勝つためには火の山にいる黄泉国の女神から珠を受けなければならない。ヨキナは自分の命とひきかえに珠を受けることに成功し、弓鳴日子たちとともに木の国へおもむく。侵略者を倒す作戦はみごとに成功し、いったんは敵を退却させたヨキナたちだったが、彼女に執着する敵のリーダー、須佐の王子は油断しているすきをねらい、彼女をさらう。弓鳴日子はヨキナをぶじ助け出すことができるのか……。
これは二つの勢力が勝利のシンボルとなる宝を奪い合う物語である。ここでの宝は主人公ヨキナであり、奪い合いの過程に恋愛などの要素がもりこまれ、ドラマティックに物語は進む。日本神話をうまく消化し、独自の物語として語り直す手腕はさすがであるが、戦いを主にするのか主人公の葛藤を主にするのか、しぼり切れていない。いや、しぼり切る必要はないのだが、テーマが言魂の重要性というものだけに、戦いの部分はもっと思い切ってカットしてもよかったのではないかと思った。二つのテーマが並立しているため、それが重層的に展開されるのではないだけに、二つのテーマの並行的な部分物語に深みをもたらしていないように感じられたのだ。
いよいよ次巻で完結予定。主人公の運命はどうなっていくのか、その着地点がどこなのかが大いに楽しみである。
(2002年3月10日読了)