「ローマは一日にして成らず[上]」の続巻。
本巻では、ローマがイタリア半島統一をなしとげるまでが描かれる。共和政の成立、ケルト族、サムニウム族、そしてギリシアの戦術の天才ピュロスとの戦闘を経て、ローマ人の政治は時間をかけてととのえられていく。そして、イタリア半島の小国であったローマは気がつけば周辺諸国の注意をひく存在になっていくのである。その間にかかった時間は約500年。なんと気の長い話だろう。まさしく表題通り「ローマは一日にして成らず」なのである。
著者は、ローマの政体の長所を書き綴ることにより、現在の「民主政治」がフランス革命の理念の自家中毒的状態ではないか、と考察している。政治の理念と現実との差を埋められないということと、現実的なローマ人の考え方や行動を対比してのことである。
しかし、これは少し乱暴ではないかとも思う。人工、そして情報の伝わる早さなどを考慮にいれないで共和政ローマと現在を比較検討するのは、こういった本にはよくあるいわば「肩入れ」のしすぎではないかと感じたりするのだ。
もちろん、物語自体は面白く、古代の歴史というものを現代の人間に身近に感じさせることはいうまでもない。
ところで、読みながら感じたのであるが、著者は読点を使うのがかなり苦手のようで、文脈を断ち切るような読点の打ち方が多く見られる。日本から長く離れていると、そこらへんの感覚が鈍るのだろうか。
(2002年6月7日読了)