「大唐風雲記 洛陽の少女」に続くシリーズ第2巻。
長安を安禄山の手から守るために秦の始皇帝が残した地下宮殿を探るのは、少女の死骸を仮の体にしている武則天。彼女は骨と化した始皇帝に会い、始皇帝陵にその秘密兵器が隠されていることを知る。方士見習の履児や龍導盤の力を借りて始皇帝の泰山封禅の儀式の現場にタイムトリップした彼女たちは、そこで強い力をもつ方士、徐福を見つけだそうとする。しかし、そこでは始皇帝が3000人の子どもたちを生け贄として、自分は永遠の命を授かる儀式を行おうとしていたのだ。子どもの命を救おうとする武則天だが、子どもたちの魂はすでに始皇帝の心と同化していた。子ども他の命を救う方法はもうないのか……。
始皇帝と徐福の関係の真相という魅力的なアイデアをもとに、武則天たちが時空を超えた活躍をする。その着想は面白く、また登場人物の個性や龍導盤というガジェットを生かした物語になっている。
それはそれでいいのであるが、前巻に続き、本巻もガジェットや方術の使い方にかなり安易なものを感じてしまう。魔法は魔法でそれをそのままあるものとして描くのは一つの方法ではあるのだが、なぜその魔法が成立するのかまでを描かなければ、ファンタジーとしては不十分ではないかと思うのである。あるいは死骸にのりうつったという武則天の設定にしても、死後何ヶ月もたてばその死骸は当然腐敗もするだろう。腐敗しない理由があるならば、そこまで書きこむべきなのだ。
そういう意味では、作者にはファンタジーのセンスというものがいささか不足しているように思われる。魔法は便利な小道具だけであってはならない。ディティールがきっちりしていなければ、面白みが半減する。
だから、作者にはこういったファンタジーよりも、中国の裏面史をミステリ仕立てにしたものがまだ向いているのではないかと思われる。次作ではそちらに力をいれたものを読ませてほしいと思うのである。
(2002年6月13日読了)