「真なる豹」に続くシリーズ第3巻。前巻から1年半ぶりの新刊である。
M高校の裏山から首なしの白骨死体が見つかった。遺留品の指輪から、その死体がかつてM高校に在籍していて行方不明になっていた少女のものだとわかる。依藤警部補はその少女、金城玲子について調べていく中で、M高校に伝わるある伝説について知る。それは、M高校には学校でもめ事があるとそれを治めるM委員会というものがあり、5名からなるそのメンバーは本人たちしかその存在を知らないというものであった。M高校の文化祭の日、太田多香子という生徒が行方不明となる。彼女の遺留品から彼女がMの一員である証拠が出てきた。そして、誘拐犯からM高校歴史部の一員である天目マサトと交換で彼女を返すという連絡がきた。マサトを狙う犯人たちの正体はなにか。Mの伝説の真相は……。
本巻に至って、やっと物語は小説らしくなる。ストーリーの展開が優先されるのだ。しかし、作者はまるで知恵の輪を解きほぐすかのように順序だてて謎解きを展開することに神経を集中させており、ストーリーそのものの面白さで読ませるというわけではない。そういう意味ではこのシリーズは作者の言葉にある「思弁小説」なのだろうか。
しかし、SF読みに言わせると、これを「思弁小説」というには無理がある。ジグソーパズルを作って、そのピースを少しずつあわせていくような展開というものを「思弁」とは呼ばないと思う。また、本巻では伝奇的な謎解きと白骨死体の発見とがまだ結びついていない。そのあたりも消化不良を感じるところだ。
また作者は秋津透ばりのルビを多用しているが、これもそれほど効果をあげているとは思えない。全巻までは使用していなかったわけだから、こういうことをいくら刊行時期があいているからといって途中でやってしまうのはまずいだろう。
果たして、完結編でこれまで繰り広げられてきたことがきっちりと結びついていくのだろうか。いささか心配になってきた。
(2002年6月20日読了)