読書感想文


神の系譜 幽霊の国・解
西風隆介著
トクマ・ノベルズ
2002年6月30日第1刷
定価857円

 「幽霊の国」に続くシリーズ第4巻。タイトルから完結編と思ったが、前巻での謎の解決編で、シリーズ自体はまだ完結していない。
 金城玲子と思われる女性の白骨死体発見、そして霊能者としてマスコミで人気のあった僧、得川宗純が殺人された事件、それぞれに関して事件の影には真浦会という宗教団体の存在がちらついていた。依藤警部補は火鳥竜介の協力を仰ぎ、真浦会の正体を探りにかかる。一方、鎌倉に研究に行ったM高校歴史部だったが、天目マサトをさらおうとする謎の一団に関わることになってしまう。マサトを狙う者たちの正体は、そして真浦会の真実の姿とは……。
 歴史の裏に隠された宗教的な意味、神として覚醒した主人公の行動、突如現れる幽霊の正体、殺人事件の謎解きなど、それぞれの要素には面白さがあるのだが、結局それが有機的につながっていないのが残念である。
 作者はライターが別名で書いた小説ということだが、おそらくライターとしてはいい仕事をしている人なのだろう。目のつけどころなどにそれが表れている。しかし、小説となると話は別だ。私自身、書評と創作を両方したりするわけだが、書く時に頭を完全に切り替えないといけなくしんどい思いをしたりする。雑文と小説は全く別物なのだ。頭の働かせ方が違う。創作には独特のセンスが必要だ。私自身が創作にとりかかる時に常にそれを痛感しているだけに、本シリーズの作者がその切り替えをうまくできていないように感じてしまうのだ。
 謎は全くといっていいほど解けていない。以後のシリーズに望みたいことは、とにかく早めに完結させてほしいということ。長期化するとはなはだまとまりのないまま終わりそうな気がするから。そして、作者にはこれを習作としてとらえていただき、次こそ小説としての面白さを押さえたものに取り組んでもらいたいのである。

(2002年6月22日読了)


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