「スター・ハンドラー」に続くシリーズ第2弾。通巻で3冊目にあたる。
異生物訓練士ミリ・タドコロの新たな任務は、惑星ヴィニヤードの上に存在する海、川、水たまりなどあらゆる〈生きている水〉を飼い馴らすこと。先輩訓練士のヒューやヤアプのポチとともに溲瓶型宇宙船〈バセットハウンド二世〉号を自ら運転してヴィニヤードにやってきたミリは、海が逃げ出してしまってひからびた港に着地する。ヴィニヤードの水は、そこに棲息する微生物によって統一行動を取るように進化していたのであった。その水と共存をはかろうとする「水中党」の首相マルレーネたちに対し、微生物を死滅させて水を安定させようとする「地中党」との対立、そしてそこに投資しようとする食通で釣り師の大富豪タイ・フィッシャーマンなどの思惑もからみ、ミリたちや後からやってきた訓練士のジャブルたちは右往左往。はたして彼女たちは〈生きている水〉とコンタクトをとることができるのだろうか。
作者ならではの小粋なアイデアが本巻でも生きている。「生きている海」というと「ソラリス」が思い出されるが、本巻に登場するものはあれとは違い、野生動物的な存在である。しかし、水そのものが生物として存在する惑星に人間が入植したらどうなるかという思考実験に前巻から引き続き登場する主要キャラクターたちが少しずれた行動をとるという展開を、実にうまくからめている。「生きている海」とのコンタクトは下巻以降で描かれることになるわけだが、自然との共存というテーマも含めてどのような展開が待っているかが楽しみである。
(2002年8月16日読了)