読書感想文


ランブルフィッシュ4 伝説崩壊編
三雲岳斗著
角川スニーカー文庫
2002年9月1日第1刷
定価533円

 「ランブルフィッシュ3 場外乱闘恋心編」の続刊。
 沙樹の騎乗するRF、ガンヒルダはとうとう準決勝に進出。その相手は恵里谷最強の闘騎手、藤真蒼威の操縦するプロトシグリッドである。何度シミュレーションしてもかなわない敵に対し、瞳子とともに作戦を練る。そこに現れたのはガンヒルダの設計者で留学中の深見祭理。彼女はプロトシグリッドを倒す方法を知っているという。そんな彼女を主役にすえた映画を撮影する企画が持ち上がり、祭理は学長自らの説得で映画出演に同意する。しかし、この企画の裏には、自衛隊も関わる別な計画が隠されていた。そんな中で、いよいよ注目の準決勝戦が始まる。沙樹と瞳子が立てた作戦は蒼威に通用するのか。
 青春ドラマと併行させ、舞台背景を明らかにしていく大人たちの思惑が少しずつ全貌をあらわしてくる。それは、RFが二足歩行型の戦闘メカニックである以上、避けては通られない問題、つまり若者たちが兵器開発に荷担させられているという現実的な背景なのだ。
 主人公の一人、瞳子はRFの平和利用を真剣に考えている。したがって、この背景が明らかになるにつれ、彼女の苦悩は深まるだろうし、それを打開する方法を考えることにもなるだろう。そして、それは若者が成長していく過程を描くものとして、重大な要素となっていくはずである。作者が練り上げたストーリーが、少しずつ大きなテーマのもとに組み上げられていくのである。
 登場する人物の数が増えてきて、少し気になるのは彼らが全て並外れた才能の持ち主となっていくことである。むろん、主人公たちの成長物語だからそれはそれでよいのだが、挫折したまま消えていく若者のエピソードなどがあってもおかしくないし、現実にはそれが多数派なのだ。読者対象を考えると、そういった現実を直視しなければならないエピソードは邪魔なのかもしれない。しかし、そういった苦味を加えることにより、本シリーズはさらに奥行きのあるものになっていくと思うのだ。

(2002年9月6日読了)


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