読書感想文


KLAN IV 野望編
田中芳樹原案
霜越かほる著
集英社スーパ−ダッシュ文庫
2002年8月30日第1刷
定価457円

 「KLAN III 迷走編」の続巻。
 リンフォード伯爵がインドに渡ったという情報をキャッチした虎ノ介たちは、ロシアに帰るサーカス団に紛れこんで日本を脱出する。それぞれ虎と狼に変身したまま輸送される虎ノ介とルネ、そしてサーカス団員のふりをするアリョーシャだったが、輸送船にはリンフォード伯爵の配下であるモルレーとスタンレー大佐が乗りこみ、彼らを捕虜にしようとしていた。一方、孝行と美笛は別便で先にインドに渡り、リンフォード伯爵のもとにとらわれている風子の居場所をうかがう。虎ノ介たちはモルレーたちの手から逃れられるのか。そしてリンフォード邸に忍びこんだ孝行たちは無事風子を救い出すことができるのか。
 舞台をインドに移し、新たな活劇が繰り広げられる。ここでポイントとなるのは獣に変身することのできるクランたちがどのようにして人間である部分と獣である部分との精神的なバランスを保っているかということである。作者はここでそのバランスの取り方を物語の展開の鍵として使うのである。
 ただ、本巻にいたって、敵たちの恐ろしさはさらに弱くなってしまった感がある。むろん、強大な敵を倒すにはその弱点を示す必要はあるだろうが、こういったエンターテインメントの場合、とてもかなわない相手に対してなんらかの策をこうじていくのが面白さの元になるのであり、巻を追うごとに弱点が次々とさらけ出されるという展開には少し不満が残った。
 次巻では伯爵側の巻き返しに期待したいところである。

(2002年9月15日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る