読書感想文


月と闇の戦記 二
守護者はぶっちぎり。
森岡浩之著
角川スニーカー文庫
2002年11月1日第1刷
定価476円

 「退魔師はがけっぷち。」の続刊。
 退魔師でありながら、幽霊を実体化させてしまうという能力を持つ菊名隆生。彼は除霊のためにおもむいたアパートの幽霊たちを実体化させてしまう。除霊がすんでいないからとそのアパートに住み、定期的な報酬も受け取るおいしい事態となるが、楓が連れてきた少女、結宇を追って大企業「イフカ」の社員たちがアパートを襲撃する。彼は、知らぬ間に神と神との大いなる戦いに巻きこまれていたのだ。滋也と楓が自分たちの正体を神であると告げても、信用しない隆生。しかし、「イフカ」の総帥である法印美和は、滋也たちとともに、隆生をも敵と認識する。わけがわからないうちに、戦いの火蓋は切られていた!
 本巻において、この物語のストーリーが本格的に動き出す。ここでの「神」は、人間を滅ぼして精霊たちも自由に暮らすことのできる世界を再現しようとする荒ぶる「神」と、それでも人間を救おうとする「神」である。しかし、「神」たちは自分たちの戦いを主目的としているため、人間である隆生のことなど歯牙にもかけなかったりする。強大な敵がなぜか卑小なはずの主人公をえらく気にかけたりという不自然な展開ではない。「神」の目的を邪魔するにいたって、はじめて主人公はその視野におさまるのである。
 壮大な戦いのはじまりと、その大きさに全く気がつかない主人公。そこいらのユーモア感覚もなかなかのもの。ただ、細かいギャグがちりばめられているのにそれらはいささかすべっているのが残念。細かなギャグよりも、シチュエーションで笑わせるタイプの小説だと思うので、自然な流れのコメディを期待したいところだ。
 次巻からは本格的な戦いが始まるだろう。そこらあたり注目していきたい。

(2002年11月2日読了)


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