「幻惑密室」に続くシリーズ第2巻。
落雷にあったのがきっかけで他人の見た風景をそのまテレパシーのように受け止めてしまう能力を持ってしまった主婦、岡安素子。しかも彼女が見た風景は、なんと女性を殺害している場面であった。彼女が出版社にした投書がきっかけで、ミステリ作家保科匡緒は再び怪事件に巻きこまれる。なんと2番目の被害者は、保科のファンが開いたオフ会の参加者だったのだ。保科の依頼を受け、神麻嗣子と能解匡緒が殺人現場が実況中継さながらに見られるという奇怪な事件に挑む。
テレパシーを送受信できる能力ではなく、一方的に受信するだけ。しかも発信している側の精神状態によって断続的にしか受信できない。この設定がキモである。作者は例によって一見アンフェアに見える設定をうまく利用し、本格パズラーに仕立て上げている。
ただ、私がミステリを読みつけてないせいもあるのか、この巻の作者の仕掛けはちょっとずるいような気もした。
それよりも感心させられるのは女性心理の描き方である。保科をめぐる二人の女性の微妙な心の動きや、夫の浮気現場を目撃した主婦、オフ会に参加していた女性たちのお互いを見る視点など、トリックよりもそちらに重点をおいているように私には感じられた。これはもうただごとではないのだ。作者の緻密な観察眼に感嘆した次第。今後の彼女たちの関係の変化が楽しみになってきた。
(2002年11月14日読了)