「かりそめエマノン」に続くシリーズ第4冊。書下ろし中編である。
小学4年生の直樹は、父親が海外に行くことになったため、父方の曾祖母の家に預けられる。なぜなら、彼の母は若くで亡くなっていたからだ。アポロ11号が月に着陸したと騒いでいる時に、直樹は恐竜の化石に強い関心を持っていた。曾祖母の家の近くには恐竜の化石が出るという場所があり、彼はそこで化石採集に夢中になる。そんな彼の前に現れたのは、そばかすの印象的な女性、エマノンだった。エマノンに連れられた直樹は、ましらと地元の人々から呼ばれている猿人に引き合わされる。ましらは、突如現れる光の輪から出てくる違う時代の生き物を助けて、再度出現する光の輪に返してやるという役目を代々務めてきた。ところが、猪罠にかかって怪我をしたましらは、今回はその役目を果たせない。エマノンは直樹にましらの仕事を代わりにするように依頼する。光の輪から現れたのは、一人の少女だった……。
本書では、エマノンが果たさなければならない仕事の一つが描かれている。決して新味のあるアイデアではないし、展開も予想通り。この内容ならば、短編でも十分ではなかったかと思われる。
少年の日に味わった強烈な思い出へのノスタルジー。時は流れ人の姿は変わっても、その心情には同じなにかが受け継がれていっているのだ。その甘酸っぱさなどはさすがにうまい。もしこれが単独作品であったなら、満足していたかもしれない。しかし、シリーズの最新作であるならば、もう少し意外性があってもよかったのではないかとも思う。ここらあたりがこういった小品のシリーズの難しさかもしれない。
(2002年12月10日読了)