「イツロベ」に続くシリーズ第2作。ただし、本書単独で読んでもなんら差し支えない。
時代は人がみなタブレットと呼ばれる小型コンピュータを携帯し、身分の識別から個人の通信まで全てをゆだねている近未来。去勢された上に毛髪をそりあげた変死体が次々と発見される。FBIの捜査官、カトラーとオカザキ、そしてトップ屋の鳴海は、それぞれ別のルートからこの事件の謎に挑む。死者たちはみな新興宗教〈ハイネスト・ゴッド〉の信者であった。彼らが謎の核心に触れようとする時、情報省からの妨害が入る。タブレットが普及するもととなったゲームソフト、ゴスペルの謎。完璧な人間であるというロザリー教授の秘密。事件の背後にある壁がカトラーたちの行く手を阻む。カトラーが最後にたどりついたところとは……。
タブレットというツールの使い方がうまい。このツールに人間が使われるということではなく、使いこなしているものとふりまわされてしまうものとの違いがよくわかる。道具というのはそういうものだ。さらに、神というものの存在を合理的に解決したかと思うと、土俗的な神秘の実在をにおわせるような描写もある。前作同様、様々な要素をどんどんと入れていっていき、少しずつその整合性が明らかになっていく。ただ、謎のほとんどは未解決のまま残されており、続巻への期待を持たせるような終り方をしている。
「イツロベ」でみられた伝奇的な要素は薄く、まっとうな近未来SFなので驚いた。はたして続巻では伝奇かSFかどちらの色が濃くなるのであろう。そんな楽しみもある。ただ、妖しさに満ち満ちた前巻ほどのインパクトはなく、どちらかというとすっきりした感じのストーリー展開である。そこらあたりが伝奇ホラーとしての面白さとSFとしての面白さの違いなのかもしれない。
(2002年12月21日読了)