「悪霊都市ククル 上」の続巻。
ナタラージャ教団の導師ザガカールから護符としてもらった短剣のおかげでラダ・シンの操るゾンビたちに対抗できるクラッシャー一行ではあるが、大量にあらわれるゾンビに防戦一方。リッキーとミミーはラダ・シンにナタラージャの秘宝を売り渡した「目利き」のフェンスと合流し、秘宝を取り返そうとする。しかし、ラダ・シンはミミーの両親を生け贄にして舞踊王召喚に向けて着々と足場を固めていた。儀式の仕上げは、ミミーまたはクラッシャーの誰かを生け贄にすること。ラダ・シンは、巧妙にジョウとアルフィンを神殿に追いこもうとする。ラダ・シンの野望をいかにして食い止めるのか。そして復活した舞踊王の力とは……。
結局、クラッシャーたちは呪術の前には彼ら本来の力を発揮することができなかった。このシリーズは本巻をもって中断し、既刊分は10数年ぶりに全巻が「改訂版」として復刊された。おもえば、第1巻の「連帯惑星ピザンの危機」は、それまで中高生向けのSFといえばいわゆるジュヴナイルSFしかなかったところに登場した、新しいタイプの小説であった。現在「ヤングアダルト」と呼ばれるジャンルの先駆者であり、アニメファンをも小説に取りこめるものであった。しかし、本書が発行された時点では、後続作品が次々と登場し、他社からもヤングアダルト文庫が多数創刊されている。伝奇アクションはまだ主流ではなかったので、本書のような設定はこのあとの伝奇アクションにつながるものとして評価できる。ただ、それを「クラッシャージョウ」でやろうとするには限界があったわけで、だからといってスペースオペラとして続けていくのも難しいところにきていたのではないだろうか。
本書は、このシリーズが一定の役割を終えたことを示す作品であったのかもしれない。作者はこのあとはカンフー伝奇アクションを中心とした活動に入っていく。
本シリーズの功績の大きさははかりしれない。ひとつのジャンルを確立するだけの新鮮さと、そして質の高さをもったシリーズであったのだ。それを忘れてはならないと思うのである。
(2002年12月30日読了)