読書感想文


レスレクティオ
平谷美樹著
角川春樹事務所
2002年4月8日第1刷
定価1900円

 「エリ・エリ」の続編。
 宇宙船の一部としてブラックホールに飛びこんでいった榊神父は、イキッスィア星系人の手により、人間の姿に再生されていた。多くの星を統べる役割を果たすイキッスィア星系人との交流の中で、自分が〈神〉を探していたことを思い出し、榊は巡礼の旅に出る。行く先々で彼を待ち受けていたのはかつて木星で知り合い親友となっていた科学者のクレメンタインであった。クレメンタインは榊の後を追うようにブラックホールに突入し、この世界にきていたのであった。同じようにしてこの世界にきていた修道女、和寿美はイキッスィア星系人を敵と信じるウォダ星系人によってクローン再生され、アッシュ、カズミ、ルシファーという腕利きの戦士となっていた。和寿美のクローンの一人である娼婦、カズミ・マリアと出会った榊は、彼女と結婚することに決めるが、結婚式の直前に何者かの襲撃を受ける。榊、和寿美、クレメンタインが揃った時、〈神〉の存在は証明されるのか。クレメンタインが同化した〈憂鬱な神の座〉とは……。
 「エリ・エリ」で消化不良になっていた部分が、本書によってすっきりしてくる。異世界の描写や多様な宇宙人の文化の書き分けなどもよくできていて、文化人類学的な雰囲気をただよわせている。特に、後半で主人公たちが目にする戦いの様子は、手塚治虫の『火の鳥 未来編』を思わせる。つまり、ここでも作者は日本SFの傑作を想起させる作品に仕上げているのである。ここで主人公たちは〈神〉について実感することになるわけだが、「エリ・エリ」で提示された地球における〈神〉の存在はどうなるのか、ここではまだわからない。いずれ書かれるはずの完結編に期待したい。
 一作ごとに作者の小説はスケールと深みを増していく。ただ、どうしてもSFが過去に描き出してきたものをたどる旅をしているという感じがつきまとってしまう。作者がそこから脱皮するのか、あるいはこの路線で行き着くところまで行くのか。目が離せない。

(2003年1月2日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る