「宮本武蔵 一」の続巻。
武蔵は、宝蔵院、そして柳生石舟斎の庵を尋ね、その大きさに一太刀も交えることなく退去する。戦わずして敗れたのである。お通は石舟斎の身の回りの世話を焼いてはいたが、武蔵が退去したことを知ると、沢庵の制止にも従わず武蔵の後を追う。一方、又八は伏見城の普請の日雇い仕事をして食い扶持を稼いでいたが、城を探索する武芸者が殺されたその死体から金と「佐々木小次郎」と書かれた剣術の免許皆伝書を盗んで逃げる。小次郎の名を騙って只酒にありついた又八であったが、おだてられいい気になり、士官の口があるとの甘言にだまされ、有り金を失ってしまう。おりしも大坂を訪れていたお杉と偶然の再開を果たし、武蔵を探す旅に同行することになる。本物の佐々木小次郎は吉岡一門の祇園藤次とともに京都に入り、吉岡清十郎の知遇を得る。その清十郎のもとに身を寄せていたのはお甲と朱実の親子であったが、朱実は清十郎に無理矢理犯され、身投げを敢行しようとする。清十郎に果たし状を送った武蔵は、鎖鎌の名手、宍戸梅軒を訪ねて伊勢路を旅していた。
本巻あたりから武蔵とお通は会いそうで会われないという「君の名は」状態に突入する。新聞連載時、人気が高まり連載を延長したためにこういったすれ違いで読者を楽しませようとしたのだろうが、まとまったものを読むと、このすれ違いが実にじれったい。ただ、終生のライバル佐々木小次郎の登場など、見どころは多く、又八もまた重要な役回りで再登場をする。吉岡清十郎はますますだらしない男に描かれており、仇役としては力不足の観を与えてしまうのが残念である。
(2003年1月13日読了)