「宮本武蔵 四」の続巻。
一乗寺の決闘で傷ついた武蔵は比叡山に身を潜めようとするが、小次郎が武蔵の卑劣なることを言い触らしたために追い立てられ、下山する。お通が恋しくなった武蔵は手紙を書き、大津でお通と再会する。しかし、激情に駆られてお通に迫ったことにより、二人の仲はギクシャクしたものとなってしまう。気まずい思いがあったために武蔵はお通から目を離すが、そのすきに彼女は彼らの後をつけていた又八にさらわれてしまう。お通を探す武蔵は彼女をさらった犯人と勘違いし、棒術使いの夢想権之助と戦うことになる。武蔵に敗れた権之助は彼を師とも仰ぐようになっていく。一方、お通とも武蔵ともはぐれた城太郎は、大尽として知られる奈良井大蔵を頼ってその旅に同行するが、大蔵の秘密を見てしまい、そのまま彼の息子となることを承知してしまう。小次郎は細川家の士官の口がかかる中で小幡勘兵衛門下の者たちを挑発し、その腕前をさらにアピールしようとしていた。
大河長編の途中とはいえ、本巻はかなり間延びした感じを与える。武蔵と夢想の出会いにしても、城太郎と大蔵の出会いにしても、この物語にとってはかなり重要なファクターでありながら、ストーリーの運びの間が悪いため、なにか無理にエピソードを増やしているという印象さえ与えてしまう。本来ならばもっと刈り込んで書くべきところなのだろう。それが緻密な書き込みという風に感じられないのはなぜだろうか。どうもこちらが読むテンポと作者の書くテンポにずれがあるらしい。大時代的だと感じさせるのもそこらあたりなのだろう。
(2003年1月18日読了)