「陰陽寮六 平安地獄篇」に続くシリーズ第8作。
中宮定子の女房、青柳衛門が、何かと気鬱な定子のために1本のロウソクを持ちこんできた。そのロウソクを囲んで夜通し怪談を語れば、ロウソクが燃え尽きた時に願いはかなうという。乞われるままに清少納言や青柳衛門は怪談を語り出す。苦しむ者の願いをかなえるかわりにその魂を奪っていく烈願鬼とその約束をしたために非業の死を遂げる男たちの物語「烈願鬼」。下賤の仕事につく女官が美しい貴公子、聖の中将から館に来るように誘われ、世にも恐ろしい様を見る「聖なる館」。将棋の才のあった検非違使、塩屋判官はその将棋の腕から高官たちに認められるようになるが、出世をかけた大勝負を前に烈願鬼が現れ……平凡な官吏の陥った罠を描く「塩屋判官」。近衛の少将の恋した絶世の美女の顔に隠された秘密と鬼に魅入られた若者の悲劇が語られる「顔」。そして、ロウソクの魔物の登場後、安倍晴明によって語られる一人の高貴な女性の悲劇「経塚」。
最初は単なる怪談のオムニバスかと思わせておいて4話目に至ってそれまで物語に一気につながりができてしまう構成は、これまでの作者にはなかったこと。どの短編も人間の業の深さを描きあげたもので、作者が追究しているテーマが貫かれている。もっとも、短編一つずつのまとまりはあまりよくなく、作者が長編型の作家であることをはっきりと示してはいる。そういう意味では、いつもの作者のような異様な迫力があまりストレートには感じられない。外伝もよいけれど、それは本伝が完結してからにしてほしいところ。次回は本伝の続巻が登場することを期待している。
ところで、本巻には「外伝之二」という言葉がタイトルに入っていない。ということは、「外伝之一」の続きということになるのだろうか。せっかくのシリーズなのだから、タイトルに統一感を出してほしいものではある。
(2003年1月30日読了)