「宮本武蔵 決闘者 1」の続巻。
鎖鎌の使い手、宍戸梅軒との決闘は、柳生宗矩が間に入ったため、引き分けに終わった。しかし、梅軒は夕姫をさらいその体を汚す。武蔵から夕姫を託されていた元忍者の妻六と伊織少年は、梅軒にだまされていたことを知る。事情を知った伊賀の上忍大猿の手により夕姫は救い出され、梅軒は伊賀から追放される。体を汚された夕姫は武蔵への愛を捨て、尼僧になってしまった。武蔵は京都に戻り吉岡伝七郎と決闘し、これを倒す。さらに、復讐の念に燃える吉岡一門は十一歳の少年又一郎を名目人にたて、一乗寺下り松で武蔵を待ち受ける。武蔵は伝説の剣豪、松山主水と出会い、下り松の根方に出る抜け道を教わる。一気に敵陣に入った武蔵は又一郎を斬殺、門人を次々と倒す。一方、佐々木小次郎は大阪城で南蛮の騎士ペルシュを倒し、その名を轟かせていた。その命を狙うのは真田家につかえる猿飛佐助。武蔵は小西家の残党にさらわれた細川家の姫を救い、家人の長岡佐渡にその名を覚えられる。仕官を勧められても断わりつづける武蔵は、どこへ行こうというのか。
本書の佐々木小次郎は、武蔵以上に虚無的な人間である。たいていの武蔵と小次郎は、対照的に描かれるのがあたりまえになっているが、作者は二人を同種の人間として描き出している。つまり、武蔵と小次郎は近親憎悪的な関係にあるのである。ただ、女性に対する姿勢はかなり違う。幼少の体験から女性に自然に接することのできない武蔵、女性をおのが欲望の排出先としか考えない小次郎。対照的なのはその部分だけなのである。政情などに背を向け、ただ戦うことのみを求める両者がどのような戦いを繰り広げるのか。作者ならではの迫力のある決闘シーンが本巻でも随所で見られるが、最後には眠狂四郎同士が対決するようなものになるのだろう。
(2003年2月3日読了)