「素浪人宮本武蔵 四 剣鬼の篇」の続巻。
西宮で病に倒れた武蔵は、老婆、曾根に助けられる。彼女の息子は既に亡く、骨を嫁の茜に拾ってもらうことが最大の望みである。茜の愛人、寺田半平にからまれて彼を叩き斬った武蔵は、茜を抱く。快癒した武蔵は再び岡山城下に。お藤と再開し、彼女を抱いた武蔵は、池田輝政が放った忍者に襲われる。しかし、忍者たちもまた武蔵の敵ではなく、半数以上を殺された忍者たちは武蔵を倒すことをあきらめて強盗に転じる。広島に入った武蔵は、香姫を助けた縁を頼りに福島正則の庇護を求める。夜伽にきた娘、津香を抱いた武蔵は、正則に所望されてその剣技を披露する。津香の兄、奥村十三郎は、そんな武蔵の腕に魅せられ、弟子入りを志願するが、武蔵は受けつけない。しかし、正則は武蔵が旅立つにあたって十三郎を弟子にするように命じ、やむなく彼と同道することになる。木刀での修業はしていても真剣の剣術を身につけていない十三郎は、旅の女を助けようとして、結局何もできない。助けた女、お楽を武蔵は抱く。熊本に入り、松山主水と決闘しようと思った武蔵であったが、主水の使う心術の正体がわからず、苦悩する。
本巻では、忍者であっても平和が来れば結局は押し込み強盗にまで堕ちなければならないというあたりに、作者の人生観が浮き上がってくるように感じられた。また、十三郎という弟子を連れて歩くことにより、武蔵の心境に変化が見られるのも面白い。松山主水を相手に苦悩し、そして逃亡する姿を描くことにより、生き残るということの意味を描き出した作者だが、物語はやっと折り返し点についたところ。弟子を持った武蔵がどう変わっていくかが見どころである。
(2003年3月12日読了)