読書感想文


MUSASHI! 巻之弐 二十六聖人の殉教
富樫倫太郎著
光文社カッパノベルス
2002年11月25日第1刷
定価943円

 「MUSASHI ! 巻之壱 蜘蛛塚」の続巻。
 宮本武蔵は、傀儡師のモモカやキムとともに故郷をあとにする。人買いに売られようとしている異人の少女、ルチアに助けを求められた武蔵だが、ルチアは武蔵の持つロザリオを見て「白の魔道士」と呼びかけた。武蔵たちはルチアを救い、長崎へと向かう。一方、ローマ教皇の命を受けた白の魔道士、アルメイダを乗せた商船は、土佐に漂着。そのことを知った黒の魔道士である石田三成たちはアルメイダもろともキリシタンたちを処刑しようと企てる。アルメイダは逃げ切ることができたが、二十六人のキリシタンたちが見せしめのために処刑されることになる。豊臣秀吉の命を狙う石川五右衛門は、児雷也と名乗る少年の助けを得て、有馬で湯治す秀吉の首を掻き切った。しかし、三成たちは魔術を用いて秀吉の体に若い女性の首をすげ替えて生き返らせる。秀吉は三成たちに操られる傀儡に過ぎなかったのである。二十六人の聖人たちの殉教を目のあたりにした武蔵はアルメイダと出会い、黒の魔道士たちと戦うことを決意したが……。
 ローマ法王の配下にある魔道士と、世界を我がものにしようとたくらむ魔道士の戦いという設定が本巻で明らかになり、武蔵は実は白の魔道士の一人であるという、大胆な展開になる。こういう展開は作者らしくて興味深いし、武蔵という人物自体、きちっとした史料が少ないだけにどのように設定してもかまわないのだ。
 ただ、宮本武蔵を語る上で避けて通れない関ヶ原の戦いへの参陣や、吉岡一門との決闘をこの設定でどうやって展開していくのか。作者の事だからきっとそこらあたりの説明もつけていくに違いないのだが、この時点では日本の運命を左右するほどの戦いが、武蔵個人の決闘を中心としたストーリーになっていくと、かなり矮小化される恐れがある。このスケールを保ちつつ宮本武蔵の物語をどのように進めていくのか。そこらあたりが今後の見どころだろう。

(2003年4月19日読了)


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