読書感想文


北野勇作どうぶつ図鑑 その3 かえる
北野勇作著
ハヤカワ文庫JA
2003年5月15日第1刷
定価420円

 「北野勇作どうぶつ図鑑 その2 とんぼ」に続く短編選集。
 「螺旋階段」は、映画の世界に入り込んだかのような出口の見えない階段をたどりつづける男の話。「楽屋で語られた四つの話」では演劇の舞台にまつわる不思議な噂が語られる。「怖いは狐」では狐に化かされると信じている男が狐に遭遇する。「カメリ、行列のできるケーキ屋に並ぶ」は見かけだけで実態のないものに対する人間の反応を、カメリというキャラクターを通じて浮き彫りにする。連作ショートショート4篇の「生き物カレンダー」はいずれも読後、なんともいえぬ味わいがある。
 本書はホラー風味の強いものを集めているが、作者独特の現実と非現実の境界線上で起こる出来事をより現実に近いサイドから見ると他の作品ではぼかしている不安定さがくっきりとあらわれるということをよく示したものばかりである。
 ホラー・アンソロジーに収録されたものをおさめているから、ホラーということを意識して書かれたということになる。しかし、作者のいいところは一見「癒し系」に見せながら、実は恐ろしい背景があるというところにあるので、こうあからさまにホラーにしてしまうとその持ち味がなくなってしまう。そこらあたり、難しいところなんだけれども。

(2003年5月17日読了)


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