「ぷちナショナリズム症候群」を受けて行われた対談。
前著で印象論的に「ナショナリズム」が若者たちをとらえていると書いた香山リカが、「9・11テロ」以来のアメリカの行動や日本の反応などを見て、印象論だけではダメだ、ちゃんと「ナショナリズム」について知らなければと思い、当代きっての「右」の論客に質問をする、という主旨の本。
ところが、相手の福田和也は「左翼の貧乏臭さ」を嫌って「右翼」を選んだとというようなスタンスで、しかもその「右翼」も最近は「貧相」になってきたと嘆く。香山が想定する「右翼」とはちょっと違うのである。
その上で、噛み合うような噛み合わないような問答が行われ、アメリカのイラク攻撃をはさんで香山がナショナリズムを肯定せざるを得なくなるという、当初の予定とはかなり違ったものになってしまう。結論の部分では福田が「奴隷キャラに徹して勝て」と提言するのだが、それは自分が馬鹿にされつつ相手を馬鹿にするというようなことらしい。よく考えてみたら、わざとボケて相手につっこませるということを日常的にしている関西の人間は、福田のいうところの「奴隷キャラ」を既に身につけていることになる。どうしてもスタイルから入ってしまう東京人の福田には、そこらあたりが理解できていないのかもしれない。写真を見たら、眼鏡をかけたルーキー新一という感じの人なのに。
結局本書でも印象論的なとらえ方は変わらない。問題提起においては面白いのだが、テーマを深める前に時間切れになったというような感じがするのである。
(2003年5月19日読了)