読書感想文


創竜伝 13 噴火列島
田中芳樹著
講談社ノベルス
2003年6月6日第1刷
定価800円

 「創竜伝12 竜王風雲録」の続刊。2年10ヶ月ぶりの発行である。やっと本伝が4巻ぶりに復活した。
 イギリスから日本に帰国した竜堂四兄弟だが、終と余は大噴火した富士山麓で米兵の服を着たトカゲ兵に襲われた上に、(故竹下首相をモデルにした)前首相を助けるはめになる。京都では始と続が小早川奈津子の襲撃を受けるが、続の弁舌でなんと奈津子は京都幕府を開き征夷大将軍に就任してしまう。米国大統領を操る牛種が姿を現し、竜堂兄弟たちの戦いはまだまだ続く。
 小早川奈津子という「にぎやかし」のキャラクターを物語の中心にすえるような形をとったということで、作者にとってのこのシリーズの位置付けが現在どうなっているかということがわかる。政治風刺がこのシリーズの特色ではあるが、これだけシリーズの感覚があいてしまうと、風刺の対象がまるで違ったものになってしまう。今回はイラク攻撃をしたアメリカのネオコンがその対象になっているが、シリーズ通しての整合性については、もうそのようなつもりもないということなのだろう。
 早く決着をつけてしまってほしい。このまま自分の玩具としてこのシリーズを保持しておくつもりなのかしれないが、それでいいのか、などと思いながら読んだのである。

(2003年6月12日読了)


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