読書感想文


KLAN VI 策謀編
田中芳樹原案
浅野智哉著
集英社スーパ−ダッシュ文庫
2003年6月30日第1刷
定価514円

 「KLAN V 苦闘編」の続巻。
 香港に本拠を持ちネットカジノで莫大な資金を稼ぎ「虎覇電征」という電子企業のオーナーとして知られる13歳の少女、李麗汎。実は彼女は虎のクランであった。彼女を支配下におこうと業務提携を申し出るリンフォード伯爵。また、同族ということで彼女を味方につけたい虎ノ介と孝行。麗汎は風子の優れた頭脳と優しい性格からすぐに友だちとなり、また虎ノ介を将来の夫と決め、日本にやってくる。虎ノ介に恋をしているルネは麗汎に対してなにかとつっかかり、アリョーシャは頭のよすぎる麗汎に危険なものを感じる。アリョーシャの心配が当たり、麗汎は風子をさらってリンフォードのもとへ走る。風子を助けに飛び出した虎ノ介とアリョーシャだが、行く手には予想もつかぬ強敵が待っていた……。
 新しいキャラクターは敵か味方かその正体をなかなか明らかにしない天才少女。そして、その少女の出現により、虎ノ介をめぐる恋の鞘当てが始まったりする。前巻ではアリョーシャの恋を、そして本巻では虎ノ介の恋を描くなど、3番手の書き手である浅野智哉はやはりそれまでの作家とは少しずつ路線を変えていっている。と同時に、ルネやアリョーシャの性格も少しずつ変わってきているが、なんといっても大きな変動は風子の扱いだろう。
 4巻までは単にさらわれて人質になるだけであった風子が、天才的な頭脳を持つ存在にと大きく変貌している。つまり、これまでは弱点であった者も近い将来大きな戦力になるという伏線なのかもしれない。
 同じシリーズも書き手が変わると微妙にカラーが変わる。そこらあたりの変わり方を楽しむのも面白かろう。

(2003年7月12日読了)


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