空中に浮かんだ「門」から現れる星魔は、滑りを帯びた醜悪な体に人間そっくりの口を持つ怪物である。それらはなかまを、そして生き物の死体に卵を産みつけ、またたくまにその数を増やしていく。そして、怒涛のような勢いで一つの都市を滅ぼし、最終的には「門」から「王」を喚び寄せるのだ。内戦が終った直後のリヴァーゲン砦に現れた二人の「サムライ」は星魔がやってくると告げに来た。彼ら「サムライ」は、かつて星魔に島全体を滅ぼされてしまった民の末裔で、自分の命に賭けても星魔を倒すことを使命としている。砦の騎士、ライゼラは、「サムライ」のサウトとともに星魔と戦うが、彼女を助け出してくれたサウトは死んでしまう。仮面をかぶり、わざと横柄にふるまう「サムライ」の少年、イセンブラスは砦を指揮し、星魔との戦いに備える。そして、星魔がとうとう砦を襲う。ライゼラたちは砦を星魔を全滅させることができるのか。
ただ「王」を喚ぶためだけに生きている生物「星魔」という設定が面白い。「王」が降りてきたらどうなるかはわからないところがその不気味さをより強くしている。また、その「星魔」を倒すためだけに存在している「サムライ」という存在が、こちらは生身の人間としての感情を持っているだけに、自らの命を賭すことと人間的な感情との間に揺れ動くというのもよくできた設定である。
したがって、その設定にどのようなキャラクターを乗せていくか、また、この怪物に対してどのように戦うかの描写がこの作品の生死を握るカギとなってくるだろう。この点に関しては、過不足がないという感じである。押さえるところはきっちりと押さえているのだが、もう少しむちゃくちゃやっても面白かったのではないかという気もするのである。もちろん、まとまりがよいのは悪いことではないけれど、「南国戦隊シュレイオー」的な好き勝手やってる楽しさ、みたいなものがでてきたらもっとよかったのになあと感じたのである。
本書は、この1冊だけでも楽しめるが、続編も書けるようにもなっている。ライゼラとイセンブラスの今後の活躍をぜひ読んでみたいものである。
(2003年7月18日読了)