「怪盗紳士は夜、微笑う」に続くシリーズ第2巻。
公園で真子が拾った金髪青年は、モンデラル王国のユート王子だった。王位継承のあかしであるクラウン・クリスタルは、夏至の日に太陽にかざすと王家の紋章が現れ、その紋章に向かって宣誓をするという犠式がある。今年、その紋章が見える都市が日本にあるということで、来日していたのだ。しかし、王子は〈怪盗ノクトルム〉にクラウン・クリスタルを盗み出された上に攻撃されて負傷していた。王子の護衛を「桜探偵社」で引き受け、〈怪盗ノクトルム〉からクラウン・クリスタルを取り返すという約束をした真子。しかし、〈怪盗ノクトルム〉の正体である祐作は、クラウン・クリスタルを盗んではいなかった。さらに、弟に譲ったはずの王位継承権を主張し始めた兄カイル王子、日本人を母に持つユート王子の着位をはばもうとする貴族たちと、陰謀も見えてきて……。
本文中にも言及されているが、本書は「ローマの休日」の本歌どりである。ただし、主人公の少女は極貧生活からの脱出しか頭になく、色恋とは無縁、というところがミソ。だいたいここで王子の恋が実ってしまったら、シリーズも終了してしまうわけだから、恋は成就しなくて当然なのだが。
真子たちの節約生活が妙にリアリティがあっておかしい。そこに蕩尽するのが当たり前の王子がからむのだから、さらにギャップが広がる。そのあたりの狙いは外さない。とはいえ、それ以外のところは軽快に進みすぎてなんとなく食い足りない感じがするのではあるが。
次巻では祐作と恭一郎の体を改造した〈組織〉の刺客が登場するようなので、ここらあたりでスケールの大きな話になるのを期待したいところだ。
(2003年8月3日読了)