「晴明百物語 烈願鬼」に続くシリーズ第9作。
丹波を占領する刀伊軍の王ムカリは、次男のカサルらと謀って長男のムンクを亡きものとしようとしていた。ムカリの懐刀であるシヴァは、来流須たちを攻める手段として刀伊軍を利用しようとしていたが、ムカリでは京を攻撃できないと判断し、ムンクにクーデターを起こさせて刀伊軍を掌握させようとする。一方、京では麗門が徐福と手を組み安倍晴明と対決しようとしていた。刀伊軍を食い止めようとする源頼光と鬼道丸たちは丹波に進軍し、その圧倒的な力の前に苦しむ。異界から戻ってきた寿宝は麗門の手から晴明を救い出そうとするが……。
物語もいよいよ佳境に入ってきた。本巻ではとうとう刀伊軍と頼光軍都の間で戦いの火蓋が切られる。蘆屋道鬼の生まれ代わりである麗門もその計り知れない力を発動しはじめた。そういう意味ではわくわくして読み進めたいところである。
しかし、物語がふくらみすぎて収拾がつかないところにきつつあるのではないかという気もしているのである。特に、刀伊の侵攻は史実を大きく逸脱してしまっているし(史実ならば刀伊の入冦は九州止まりなのだ)、伝奇小説の醍醐味である史実の裏面を尋常ならざる力を使って面白く演出するという楽しみ方はもう既にできなくなっている。
六巻あたりまでは、いくらでも風呂敷を広げたらいいと思っていたのだが、本巻に至ってなにか食傷気味に思えてきたのだ。
作者は物語に過剰に思い入れをするタイプのようで、それがはまるとぐっとくるけれども行き過ぎると辛くなってくる。本巻はそのあたりの分岐点のような気がするのである。
(2003年8月7日読了)