読書感想文


ランブルフィッシュ6 亡霊殲滅編(上)
三雲岳斗著
角川スニーカー文庫
2003年8月1日第1刷
定価495円

 「ランブルフィッシュ5 凶天使襲来編」の続刊。
 SR戦にそなえて恵里谷の各班はRFの整備や練習に余念がない。沙樹は使用不可能ということでお蔵入りになっていた武器カドゥケスを使った特訓を行うが、ガンヒルダの性能上、どうしてもうまく操れない。イギリスからやってきたフェニックス闘専のメンバの一人であるキャロラインは沙樹と過去に何かあったらしく、瞳子に戦線布告するようにいきなりキスの挨拶をし、瞳子が同性愛者ではないかという噂が学校中に広まる始末。そんな中で沙樹は夜な夜な部屋を抜け出て金髪美人と密会しているという噂が……。密かに後をつける瞳子。一方、まりあは自信を失い自暴自棄となり、自殺行為のような練習を繰り返している。さらに、練習中のRFを襲う正体不明のRFが現れ、恵里谷は騒然となる。彼らはSR戦を無事に迎えることができるのか……。
 本巻では、沙樹と瞳子をめぐる人間関係がコミカルに描かれる。もちろん、今後の展開には必要な伏線なのだろうけれど、SR戦という山場を前にして作者自身が緊張をほぐすような感じでもってきたエピソードなのだろう。それだけに、ところどころに挿入される謎のRFの登場シーンがぐっとクローズアップされるという効果が現れている。こらあたりの演出はさすがにうまい。次巻ではこれを一気に緊張に持っていくことになるのだろう。このエピソードの下巻となる続巻に期待したい。
 ところで、カバー見返しの「著者略歴」には「第5回電撃ゲーム小説大賞〈銀賞〉」「第5回角川スニーカー大賞〈特別賞〉」の受賞歴は書かれているのに「第1回日本SF新人賞」は書かれていない。作者のコメントもついているから、意図的に外したものと思われるが、いくらヤングアダルト文庫に載せる略歴だからといって「日本SF新人賞」を外すというのはSFファンとして寂しく思う。

(2003年8月15日読了)


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