読書感想文


ランブルフィッシュ7 亡霊殲滅編(下)
三雲岳斗著
角川スニーカー文庫
2003年9月1日第1刷
定価533円

 「ランブルフィッシュ6 亡霊殲滅編(上)」の続刊。
 SR戦を前に現れた謎のRF、〈霧の亡霊〉。恵里谷のトップたちが集まったA班は、ベゼリィでこの幻の敵を倒そうとする。しかし、そこに乱入したのはフェニックスのRFウリエル。リタイア寸前のベゼリィをも犠牲にして〈霧の亡霊〉を倒そうとするウリエルに対し、沙樹の騎乗するガンヒルダが登場、戦いの行方は混沌としてくる。一方、教官の白石奈緒は敵の正体を突き止めようと秘策を練る。そして、ガンヒルダの設計者である深見祭里は恵里谷の最深部に潜り込み、重大な秘密を発見する。恵里谷に隠された秘密とは。そして、〈霧の亡霊〉の正体は……。
 ジグソーパズルのピースを嵌め込むようにこれまで張られた伏線を十全に生かし、〈霧の亡霊〉の秘密を読者のもとに提示する。しかも、それは単に謎解きのための謎ではなく、新たなる大きなテーマへの前段階なのだ。さすがは実力派の作者だけのことはある。
 多数の登場人物が入り組んでいながら描き分けをするのはみごとである。ただ、ちょっと増やし過ぎなのではという気もしないではない。ストーリーの背景がだんだん明らかになり、どんどんスケールアップしてきている現在、今後も登場人物が増えることは容易に予測されるし、作者が新たな登場人物をきっちりとコントロールするだろうことも想像に難くない。しかし、だからこそ焦点をきっちりとしぼれるように中心人物は少なめに抑えておいた方がよいのではないかという気がする。大きなものを見せるために、近くにあったもののピントがぼけてしまうようなことにならねばよいが、と思うのである。
 さて、いよいよ次巻はフェニックスとの決着ということになるだろう。その戦いが巨大なテーマにどう作用していくのかが楽しみだ。

(2003年9月3日読了)


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