「1988年10・19の真実」の続編にあたる。
優勝をあと一歩で逃した翌年、近鉄バファローズはとうとうリーグ優勝を果たし、ジャイアンツとの日本シリーズに駒を進めた。快調に3連勝したあと、ヒーローインタビューでの加藤哲郎投手の「巨人はロッテより弱い」発言をきっかけにジャイアンツが巻き返し、ついには4連敗して日本一を逃してしまう。本書は、その日本シリーズの一部始終を観客席から見たまま描いたものである。
加藤投手のインタビューはビジターだったので観客席には届いていなかったけれど、スポーツニュースでその発言を聞いた著者は、その言葉に違和感を感じなかった、というあたりが面白い。つまり、それだけ3連敗した当時のジャイアンツは客席から見ていても歯ごたえがなかったということになる。
ただ、本書を読んで感じたのは、前作と全く同じ手法で描いているために、なにか新鮮さがないということ。さらに、加藤発言ははっきりと裏づけをとっていない(私の記憶では「巨人打線よりロッテ打線の方が怖い」だったはず)し、それ以外の部分でももっと当事者の証言を織り込めばさらに面白くなったはずなのにというところである。
さらに、ジャイアンツファンに対する批判はかなり厳しいのに、自分たちだってバファローズについてはくわしいけれどジャイアンツに関しては一切知らないでいて平気だということについては無自覚でいるというあたり、おおいに気になる。むろんこれはバファローズの応援団長が書いたものだから、普通のノンフィクションライターと同じ姿勢である必要はないのだが、今後著者が野球ライターとして生きていくのであるならば、そこらあたりに無自覚であるのは弱点となるのではないかという、そんな印象を受けた。
(2003年9月6日読了)